病院コホート・プロジェクトに関するQ&A
プロジェクト全般について
Q1: 知的財産権の取扱いについて教えていただけますか?
A: この研究で行われる遺伝子解析や、その他の解析の結果に、特許などの知的財産権の生じる可能性があります。しかしこの場合、被験者の方々が特許料などを受け取る権利を保有することはありません。
Q2: 研究への参加・協力を断った場合、どうなりますか?
A: 協力を自由に断る権利があります。また断ったことによって不利益を受けるようなことは決してありません。
Q3: 提供した血液を調べて、病気のリスク等が見つかった場合に教えてもらえますか?
A: 個人情報として、万全なセキュリティーを確保するために、本プロジェクトでは、個々人の解析結果が、もともと誰のものであったかをさかのぼってたどらないシステムとしています。したがって、プライバシー保護を優先しており、遺伝子解析によってある種の病気のリスク等、何か医療上の有用な情報がわかっても直接、被験者の方々にお知らせすることはできませんので、その点は悪しからずご了承ください。
Q4: 研究結果はどこで知ることができますか?
A: 結果については、ホームページや、学術集会、学術論文、マスコミを通じて随時公開していく予定です。
Q5: 研究内容は教えていただけますか?
A: 研究計画の内容や、遺伝子解析法に関する資料を見ることはできます。
Q6: この研究をすれば、協力した者にとって、どんな利益がありますか?
A: 遺伝子解析の部分では、個人的に受ける利益はありません。しかし本研究によって得られた成果が社会に還元されることにより、新しい知見に基づく病気の治療を受けることが期待されます。一方、遺伝子解析の部分以外では、個人情報の管理に支障のない範囲で、一部の研究成果を直接的に役立てていくことも可能です。
Q7: 撤回したくなったらどうしたらいいですか?
A: 同意いただいた後も、いつでも撤回することは可能です。その際は、撤回文書を送っていただくことになります。
Q8: 参加・協力するのに、年齢や性別の制限はないのでしょうか?
A: 年齢や性別に制限は特に設けてありません。ただし、ご本人の意思で参加・協力の可否を判断することが難しいような場合には、その都度ご相談させていただきます。
Q9: どのような手順で協力するのでしょうか?
A: まずメディカル・リサーチ・コーディネーターが被験者の方々に研究内容を説明し、十分にご理解いただき、そのうえで研究協力の意向をお持ちいただければ、同意文書にご署名の後に、研究に参加していただきます。ご参加いただく被験者の方々には家族歴の記入や身体計測、生活習慣調査票の郵送、そして後日の外来受診日に、血液と尿をご提供いただくとともに、診療情報を利用させていただきます。
Q10: 面倒な検査などはありますか?
A: 特に面倒な検査はございません。同意いただけた場合、その当日は身体計測のみで、後日の外来受診日に採血、採尿をしていただきます。
Q11: 誰でも協力できますか?
A: 当センター病院の受診者であれば、どなたでも協力できます。基本的に、最初は、外来受診の際などに主治医から当プロジェクトの紹介をいたしまして、ご協力をお願いしています。
Q12: 今は時間がないのですが、後日でも参加・協力できますか?
A: 研究内容のご説明を含めて、合計で20分程お時間がかかりますので、次回の外来受診日や検査の合い間などお時間があるときにお越しいただいて構いません。
Q13: 本人に代わって家族の者が同意することは可能ですか?
A: 恐れ入りますが、原則として、ご本人の同意、自筆のサインが必要です。
個人情報管理について
Q1: 試料を多くの研究課題に使うとしたら、個人情報の漏洩にはつながらないのですか?
A: 研究に用いられる試料(血液や尿)からは、個人を特定できる情報を削り新しい符号につけ変えて、特定できないようにしています。この作業を匿名化といいます。次項の管理システムも含めて、個人情報の漏洩防止には細心の注意を払っています。
Q2: 個人情報はどのように管理されていますか?
A: 個人情報は匿名化されています。診療記録は個人識別情報(どこの誰であるかという情報)を切り離して、匿名化番号と臨床情報だけがプロジェクト全体の医療情報データベースとして日常診療のデータとは全く別に整理・保管され、これが(個人識別できない形で)個々の研究課題に利用されます。
Q3: 採取された血液は具体的にどのように使われますか?
A: 個人情報を匿名化した上で、ご提供いただいた血液サンプルから血清、血漿成分の分離とDNAの精製を行い、それらを研究所の検体保管室で管理・保管します。当施設の倫理審査委員会で承認された研究計画に基づき、所定の手続きに沿ってなされた研究者の要望に対して、必要な試料が分配され研究に用いられることとなります。
Q4: 万一、個人情報が漏洩した場合にはどのように対処するのでしょうか?
A: 本研究では、厳格な個人情報・プライバシーの保護を心がけており、組織的な犯罪以外の漏洩はないと考えています。万一、漏洩した場合には、法律にゆだねるしかありませんが、個人を特定できる情報とその方の遺伝情報との間には、2重3重の防御策を設けてあるため、両者が一体として(すなわち結びついた形で)漏洩することはシステム的に生じないと考えています。それでも、もし個人情報保護の方法に関して不安を感じられご納得いただけないようでしたら、もちろん研究への参加をお断りいただいて構いません。参加をお断りされても、病院における診療等で不利益を受けることは一切ありません。
Q5: 血液以外に、どのような情報を提供するのでしょうか?
A: 被験者の方々の病気の状態を詳しく把握するために、各種の検査結果や、飲んでいる薬の情報などの診療記録を研究に使わせていただきます。しかし、被験者の方々を特定する事につながる氏名、生年月日、住所、電話番号などの個人情報は、医療機関内で厳重に保管・管理し、外部に漏洩しないよう万全をきたします。
用語について
Q1: ゲノムとはどのようなものですか?
A: ヒトでは30億塩基対からなる遺伝子情報のことです。その根本となる化学物質(DNA)は‘二本鎖’のかたちで格納されており、そこに載っている遺伝暗号の4つの文字A,G,C,Tの並びが私たちの「生命の設計図」をかたち作っているのです。私たちはこの「生命の設計図」を染色体という形で見ることができます。遺伝暗号は、私たちの姿かたちが違うのと同じように個人間でかなりの違いを持っています。違っている箇所というのは、割合でいうと、わずか零点、数パーセント程度ですが、数でいうと300万から1000万箇所にものぼります。私たちは、この遺伝暗号の違いをもとに病気というものを考え、その情報を活用して新しい治療法や診断法を開発したいと考えています。
Q2: 染色体とはどのようなものですか?
A: DNAとたんぱく質とからなる遺伝情報を担う細胞内成分のことをいいます。ある細胞が1個から2個に増えるとき、DNAも倍になって、その後に2つの細胞に分裂します。DNAは糸状で真っ直ぐ伸ばすと数メートルにもなりますが、細胞分裂のときにはもつれ合わないようにらせん状に折りたたまれ、染色体を構成します。私たちは、この細胞分裂の時に「染色体」という形でDNAの塊を目にすることができるのです。染色体の数は生物によって決まっており、ヒトの染色体は23対=46本から成り立っています。
Q3: 「インフォームド・コンセント」とは何ですか?
A: この言葉は「説明を受けた上の同意」と訳されています。治療法の選択や、治験への参加依頼、臨床研究への参加協力依頼などに際して行われます。
インフォームド・コンセントは医師やメディカル・コーディネーターから、研究の目的や方法、予想される効果や起こりうる不利益の可能性、研究に参加した場合の権利等についての説明を受け、その受け手が十分に理解し、納得し、同意して初めて成り立つものです。